コラム
Jevとは?LLMとの違いと、業務でのAIの使い分け方
- 生成AI
- AI顧問
- PoC開発

Jevは、決まった選択肢から答えを選ぶ「判定」に特化したAIです。文章は書きません。 2026年9月15日に、米国のTypeSafe AIが公開しました。
ChatGPTなどに使われているLLM(大規模言語モデル)で、問い合わせの担当部署を決めるような判定を大量に処理している場合、Jevに置き換えると応答時間と費用を減らせる可能性があります。この記事では、JevとLLMの違いと、LLM・Jev・プログラムの使い分け方を解説します。
LLMとJevは何が違うのか
違いは、出力の形です。 LLMは文章を出力し、Jevは選択肢と確率だけを出力します。
「請求金額が間違っています。返金してください」という問い合わせについて、担当部署を尋ねた場合の出力は次のとおりです。
- LLMの出力。「経理部門が担当する可能性が高いと考えられます」
- Jevの出力。「経理(確率0.82)」
確率は、その答えが正しい見込みを表します。
LLMにも、選択肢から一語だけ答えるよう指示できます。ただし、LLMは短い答えでも1語ずつ書くため、そのぶん時間がかかります。 Jevの1回あたりの応答時間は0.07〜0.5秒です(TypeSafe AIが米国で計測した公表値)。
Jevはどのような形式で答えるのか
Jevは、1通のメールについての複数の判定を、1回でまとめて返します。

判定の形式は次の3種類です。
- 選択肢から選ぶ。「経理・営業・技術のどれか」のように、最大255個の選択肢から1つを選びます。
- 段階で答える。「緊急度を低・中・高で評価する」のように、段階の数に応じた数値(3段階なら0〜2)を返します。
- 「はい」の確率で答える。「返金の要求を含むか」のように、はい・いいえで答える質問に0〜1の確率を返します。
LLM・Jev・プログラムはどう使い分けるのか
次の3つを、上から順に当てはめます。
- プログラムを使う業務。「金額が10万円以上なら承認に回す」など、条件で答えが一意に決まる業務です。
- Jevを使う業務。担当部署の振り分け、緊急度の判定など、選択肢が事前に決まっている業務です。
- LLMを使う業務。メールの下書き、要約、翻訳など、文章そのものを出力する業務です。
1つの業務に、LLM・Jev・プログラムの3つを組み合わせることもあります。問い合わせ対応では、Jevが担当部署を判定し、LLMが回答文を書き、Jevが回答文を送信してよいかを判定します。
いまLLMに任せている処理から、選択肢から選んでいる部分を洗い出すと、Jevに置き換えられる候補が見つかります。
Jevはどのようなことに使えるのか
選択肢が事前に決まっていて、件数が多い判定に使えます。
- 問い合わせの振り分け。担当部署、緊急度、返信の要否を判定します。
- AIの回答チェック。LLMの回答文に、社外秘の情報や不適切な表現が含まれるかを判定します。
- AIエージェントの監視。業務を自動で進めるAIが、同じ操作を繰り返していないかを判定します。
- 大量データの分類。アンケートの自由回答や商品データが、どのカテゴリに当たるかを判定します。
- 書類の審査。文字データにした申込内容に、記入漏れがあるかを判定します。
Jevに渡せるのは文字のデータだけです。紙やPDFの書類、画像は、先に文字に起こしてから判定させます。
Jevは本当に間違えないのか
Jevも判定を間違えます。
TypeSafe AIは「Jevはハルシネーション(もっともらしい誤答)をしない」と説明しています。これは、測定の結果ではなく、選択肢にない答えを出力できない仕組みによるものです。たとえば「経理・営業・技術」から選ばせた場合、Jevは「総務」とは出力しません。一方で、正解が「営業」の問い合わせに「経理」と出力することはあります。
導入の前に、過去に担当者が振り分けた問い合わせをJevに判定させ、正答率を測定しましょう。測定に使うデータは、本番で届く問い合わせと同じ傾向のものを選びます。テスト用に選んだデータの正答率が本番で再現しない問題は、生成AIのPoCでも起こります。
測定には、日本語の実際の問い合わせを使います。 TypeSafe AIは、英語の判定が最も正確で、日本語などでは正答率が下がりうると説明しています。
確率の低い判定はどう扱うのか
自動で処理するかどうかの境目(しきい値)を、正答率の測定結果から決めます。
TypeSafe AIは、確率が高い答えほど正解しやすくなるようにJevを調整したと説明しています。ただし、確率0.9の答えが実際に何割当たるかは公表されていません。そのため、境目は自社のデータで決める必要があります。
境目を上げるほど、誤判定が減るかわりに、担当者が確認する件数が増えます。境目を動かしながら、自動で処理した中の誤判定の件数と、担当者に回る件数を見比べます。 TypeSafe AIも、最初は境目を高めにして自動で処理する件数を絞り、自社のデータで調整するよう勧めています。
Jevを使うと、どれくらい速く安くなるのか
自社のデータで測定するまで分かりません。 TypeSafe AIは「LLMより193.6倍速く、444.6倍安い」と発表しています。この数字は、TypeSafe AIの社内チームが作った4つの業務を、主要なLLMにも処理させて比べた値です。 TypeSafe AI自身も、実際の効果としては高めの数字だと説明しています。
応答時間の0.07〜0.5秒は、米国で計測した値です。日本から使う場合の応答時間も、自社の環境で測ります。
Jevはすぐに使えるのか
まずは検証用に試す段階です。 2026年9月時点のJevは、先行提供の段階です。順番待ちに登録した開発者から、順に使えるようになっています。仕様と料金は変わる可能性があるため、本番に組み込む前の検証から始めます。
サービスは米国で運用されています。 TypeSafe AIは、送られたデータをJevの学習には使わないと説明しています。それでも、顧客の氏名や連絡先を含むデータを送る場合は、試す前に社内の個人情報の担当者に確認します。
まとめ
判定だけを行う業務は、LLMではなくJevに任せられる可能性があります。 Jevは、次の順番で試しましょう。
- 選択肢が事前に決まっている業務を探しましょう。
条件で答えが一意に決まる業務は、Jevではなくプログラムで処理します。 - 件数の多い業務から試しましょう。
1日に数件の判定なら、LLMのままで問題ありません。件数が多いほど差が大きくなります。 - 過去の日本語のデータで正答率を測りましょう。
担当者が振り分けた過去の問い合わせをJevに判定させ、答え合わせをします。応答時間と費用も、このときに測ります。 - 確率の低い判定を担当者に回す仕組みを用意しましょう。
測定の結果で境目を決め、本番でも正答率を測り直しながら、自動で処理する範囲を広げます。
弊社では、LLM・Jev・プログラムの使い分けの整理から、PoCでの精度の検証まで対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

ライター
小林昌太郎 / フィード株式会社 代表取締役CEO
新卒で富士通Japanに入社し、自治体向けのシステム導入と自社プロダクト開発を担当。コインチェックで金融基盤・金融犯罪対策システムの開発、ストックマークで自然言語処理プロダクトのリードエンジニア、グラファーで生成AIプラットフォーム等の新規事業開発に従事したのち、フィード株式会社を創業。