コラム
バイブコーディングで作った試作を、社内で本番運用するには。認証・権限・データ・環境・保守体制の5つの準備
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社内で試作を見せたら好評で、「部署全体で使いたい」と言われたものの、そのまま広げてよいか迷っていませんか。
この記事では、バイブコーディング(Vibe Coding。AIに指示を出しながらコードを書かせる開発)で作った試作を、社内で本番運用するまでに整える5つの準備と、試作のコードを土台にするかの決め方を解説します。
試作と本番運用は何が違うのか?
違いは、使う人と直す人が別になることです。試作の段階では、作った本人が使い、困ったら本人がAIに頼んで直します。そのため、ログインが共有のパスワードでも、データが本人のパソコンにあっても、困る人がいません。
本番運用は、部署の数十人が毎日使い、止まると業務が止まる状態を指します。使う人は、作った人に頼らずにログインし、自分の分のデータだけを扱えなければなりません。作った本人が休んだり異動したりしても、別の人が直せなければなりません。
試作で確かめたのは「この画面と業務の流れで役に立つか」です。本番運用に移すときは、それに加えて、画面には出ない5つの準備(認証・権限・データ・環境・保守体制)が要ります。
試作のまま広げるとどうなるか?
試作のまま使う人を増やしても、しばらくは問題が表に出ません。困るのは、人が入れ替わったときと、何かが壊れたときです。
共有のパスワードでログインしていると、異動した人や退職した人も使い続けられます。誰がデータを書き換えたかも、後から追えません。データが作った人のパソコンや個人のアカウントにあると、その人が離れた時点で、部署のデータに誰も触れなくなります。
また、使われている試作をそのままAIに直させると、直している途中の状態が全員の画面に出ます。直した結果が壊れていれば、その時点で部署の業務が止まります。そのとき「誰に連絡すればよいか」が決まっていなければ、作った本人に連絡が集中します。
本番運用の前に整える5つの準備
1. ログインを会社のアカウントにそろえる(認証)
ログインには、社員が普段使っているGoogle WorkspaceやMicrosoft 365のアカウントを使います。この方式をシングルサインオン(SSO)と呼びます。会社のアカウントでログインする形にすると、退職でアカウントが止まった時点で、試作から作ったツールも使えなくなります。
共有のパスワードと、ツールの中だけで作った個別のアカウントは、本番運用の前にやめます。どちらも、人が入れ替わるたびに誰かが手で消す必要があり、消し忘れが残るためです。
2. 役割ごとに、見られる範囲と変えられる範囲を決める(権限)
使う人を、役割で2〜3種類に分けます。たとえば「自分の担当分だけを見て入力する人」「部署全体を見て承認する人」「設定を変える管理者」です。役割ごとに、どのデータを見られて、何を変えられるかを表にします。
表ができたら、役割の違うアカウントを2つ用意して、見えてはいけないデータが見えないかを試します。
3. データの置き場所と、戻し方を決める(データ)
部署のデータは、会社が契約しているデータベースやクラウドの保存先に置きます。作った人のパソコンや、個人のアカウントで作ったスプレッドシートには置きません。
置き場所が決まったら、次の3つを決めます。
- バックアップの頻度。毎日なのか、更新のたびなのか
- 戻し方。誤って消したときに、誰がどの手順で前日の状態に戻すか
- 社外に送るデータの範囲。ツールの中で生成AIのAPIを呼んでいるなら、個人情報や取引先の情報を送ってよいか
戻し方は、決めるだけでなく一度試します。バックアップがあっても、戻す手順を誰も知らなければ、消えたときに使えません。
4. 試す場所と、使う場所を分ける(環境)
部署が毎日使う場所(本番環境)とは別に、直したものを先に試す場所(検証環境)を用意します。 AIに直させるのは検証環境のほうで、そこで動きを確かめてから本番環境へ移します。
本番環境へ移す操作は、決まった人が行います。移したあとに不具合が見つかったときに、前の版へ戻す手順も用意しておきます。こうしておくと、直している途中の状態が部署の画面に出なくなります。
5. 直す人と、困ったときの窓口を決める(保守体制)
次の3つを、本番運用の前に決めます。
- 直す人。不具合を直し、機能の追加を引き受けるのは誰か。作った本人なのか、情報システム部門なのか、外部の会社なのか
- 窓口。使っている人が「動かない」「こうしてほしい」と伝える先。作った本人の個人チャットにしない
- 止まったときの連絡。業務が止まったときに、誰に連絡し、何時間以内に誰が対応を始めるか
試作を作った人が引き続き直す場合も、仕様と直し方を書き残し、2人目が直せる状態にしておきます。
試作のコードは、そのまま本番に使えるのか?
使えるかどうかは、コードを読んでから決めます。画面の構成や業務の流れは、試作で確かめたものをそのまま引き継げます。一方、認証とデータの置き場所は、試作の段階では仮の作りになっていることが多く、後から差し替えるとツール全体に手が入ります。
判断には、エンジニアに次の2つを確かめてもらいます。
- 認証とデータの置き場所を差し替えられる作りか。差し替えが一部の修正で済むなら、試作を土台に育てます
- AIが書いたコードを、別の人が読んで直せるか。同じ処理があちこちに書かれ、直す箇所を追えないなら、試作は仕様書として使い、本番用に作り直します
作り直す場合でも、試作は無駄になりません。「この画面で、この順番で入力すれば業務が回る」という確認は、すでに済んでいます。作り直しの判断の進め方は、GAS・マクロ・PowerAppsのツールを直し続けるか作り直すかでも扱っています。
まとめ
- 社員の会社アカウントでログインする形(SSO)にしましょう。
共有のパスワードと、ツールの中だけで作った個別のアカウントをやめます。 - 役割ごとに見られる範囲と変えられる範囲を表にし、2つのアカウントで試しましょう。
見えてはいけないデータが見えないかを確かめます。 - データを会社の保存先に移し、バックアップから戻す手順を一度試しましょう。
生成AIに送ってよいデータの範囲も決めます。 - 検証環境を用意し、直したものはそこで確かめてから本番環境へ移しましょう。
前の版へ戻す手順も用意します。 - 直す人・窓口・止まったときの連絡を決め、試作のコードを土台にするかをエンジニアに確かめてもらいましょう。
作った本人がいなくても直せる状態が、本番運用の前提になります。
弊社では、Vibe Codingでつくられたコードのレビューと保守から、本番運用に向けた作り直しまでを行っています。試作を部署に広げる前に確かめたい箇所があれば、お気軽にご相談ください。
ライター
feeed編集部 / フィード株式会社
フィード株式会社のコラム編集部です。PoC開発・新規事業開発・受託開発の現場で得たことを、発注する側の判断に役立つ形で書いています。
試作を本番で使える形にするところから、一緒に進めませんか?
弊社は、Vibe Codingでつくられたコードのレビューと保守、本番運用に向けた作り直しを同じチームで引き受けています。試作を見せていただくところからご相談ください。


